オープンソース商標イニシアティブ

Open Source Trademark Initiative

Open Source TradeMark Initiative

オープンソースのプロジェクトにおいて、商標を適切に登録し、管理することは重要なことです。何故なら、商標が適切に登録され、管理されていれば、開発者および利用者を含む全ての人達が、そのプロジェクトの名称やマークを安心して利用することができるからです。例えば、Linuxディストリビューションベンダーは、自社のディストリビューションに関して適切に商標を登録し管理することで、自社のサービスや製品の差別化を行い、ブランドを築き上げることが可能です。

他方、商標が不適切に登録されまたは行使されたことによって、これまで、多くのオープンソースのプロジェクトが苦しめられてきました。例えば、「Linux」との商標を登録し、これを独占的にしようとする者が日本を含む世界各地でに現れました。オープンソースコミュニティはこれに適切に対処するために数千万円の経費を費したと言われています。近年においても、著名なプロジェクトの名称が不適切な第三者によって商標登録され、係争が発生することがしばしば生じています。

さらに、オープンソースライセンスの中には、改変したソフトウェアの配布に当たって商標の使用を制限しているものもあり、その場合に、そのオープンソースソフトウェアの改変物であることを示すために何が許されるのかについて、未だ統一的な理解が得られているとは言い難い状況です。

このように、適切な商標の登録と管理は、オープンソースの自由で公正な発展のために重要かつ不可避の問題でありますが、商標に関する権利は、著作権とは異なり、作品の制作をもって発生するものではなく、各国の特許庁において商標を出願し、登録が認めらなければなりません。この商標の登録とその後の管理をプロジェクトの管理者が自ら行うのは容易ではなく、これらを適切に行うには、然るべき資格を持った弁護士または弁理士に対応させることが必要となります。また登録までに幾ばくかの費用を必要とし、さらにその維持にも幾ばくかの費用を必要とします。さらに、商標権は権利者に対して排他的かつ独占的に商標を使用できるという強力な権利を与える制度であり、その管理と運用には法的なノウハウを必要とします。

そこで、オープンソース・グループ・ジャパンでは、オープンソースのプロジェクトが商標の登録と適切な管理を行うことを支援するプロジェクトとして、弁理士および弁護士らの参画の上で「オープンソース商標イニシアティブ」(Open Source TradeMark Initiative)を立ち上げ、全ての関係者が安心して自由で公正な商標の利用が行える環境の整備を目指すことに致しました。オープンソース商標イニシアティブでは、下記の取り組みを行う予定です。


1. 商標登録の啓蒙と登録のための金銭を含む支援

オープンソースプロジェクトに対して商標取得の啓蒙活動を実施し、必要に応じて金銭を含む日本国内外での商標取得の支援を行います。

2. コミュニティ向けの標準的な商標利用許諾ガイドラインの作成

オープンソースプロジェクトに関わる開発者から利用者まで全ての人々が自由で公正にソフトウェアを利用できることを保証し、プロジェクトに対しては一般的に考えられる名称やマークの保護を与えることを明確にする標準的な商標利用許諾ガイドラインを作成し、一般に公開します。

3. 係争への積極的介入

オープンソースプロジェクトの名称等に由来すると考えられる商標出願の内、不適切な出願だと考えられる事案に対し、積極的な特許庁への情報提供を行います。さらに、登録済みの商標によりオープンソースの活動に不利益が生じまたはその虞があると判断した場合には、その商標の正統性を調査した上で、場合によってはオープンソースプロジェクトとの協力体制の下で特許庁への商標登録異議の申立ておよび無効審判の申立て等を検討します。

4. コミュニティからの委託または寄贈を受けて、自ら商標を取得、管理、運用

オープンソースコミュニティからの委託、または企業等からの希望を受けて、オープンソース・グループ・ジャパンとして代理でプロジェクトの名称およびマークの商標を日本国内外で登録し、プロジェクトとの協力の上で商標利用許諾ガイドラインを作成し、コミュニティ全体での自由な商標の利用を促進します。


プロジェクトメンバー

法務アドバイザー